2014年11月29日土曜日

11/27/14 『ASDに関わる専門家の会』会場:作業療法場

私が肩に掛けているのはビーズの入ったずっしり重い蛇。
抱えているカエルは、力を加えるとバイブが動きだします。

ASDはAutistic Spectrum Disorders=自閉症スペクトラム障がいの略。


自閉症スペクトラム障がいは、先天性の脳の障がい。通常3歳頃までに症状が表われ、症状による困難さが生涯に渡って続く発達障がいです。

北米でも日本でも近年ASD人口の増加が見られており、ASD本人、そして、その家族のサポートの必要性が高まってきています。

自閉症スペクトラム障がいの三大特徴などに関しては、
以下のページでご説明してあります。

http://kokoronoartwork.blogspot.ca/2014/01/12314asd.html

私の住んでいるカナダBC州のシュスワップ地域では、ここ数年間ASDの診断が降りたお子さんの増加により、ASDを対象とする専門家が増えてきました。

数年前にASDの家族のためのサポートグループが発足され、その後ASDに関わる専門家の会も始まりました。

今回の出席者は、アート・セラピストの私の他は、音楽療法士、数名の言語療法士&作業療法士、政府関連の子ども精神衛生課職員など
20名以上が集まりました。

今回はメンバーの一人の作業療法士が会場を提供してくれたので、
見学がてら、いろいろなものを試してみました。 

自閉症児は体の使い方が不器用なことが多いので、遊具のような道具を
用いて身体の使い方を遊びながら練習・体得するために作業療法を受ける
という選択肢もあります。
 バイブ内蔵なので、足を入れると震えだします。痺れる感覚。
クッションには空気がたくさん入っていて、安定性がありません。
エクササイズ用のボールに座っているような感覚。
椅子に座っても落ち着きがない人には最適!
ドライ・プールと呼ばれているもので、この中に潜ったり、ボールの体感刺激を受けるプール
松葉杖のように見えるけど、椅子なんです。
バランスを取りながら座っていみたけど、ぎこちなかった。

天井から吊るされたブランコのような椅子。
ミニ・トランポリンや、壁にはクライミングできる仕掛けも。

お子さんだけでなく、大人の私も興味津々に。
いろいろ試して体感して楽しみました。
皆さんクライアントとその家族への想いが深く、とても白熱したミーティングと
なりました。

家族中心のASDサポートとはどのようなものなのか?

家族中心のASDサポートとは、三輪車のイメージはどうか。
ASDのお子さんを中心に、親御さんが舵取りをし、後輪の二つがサポーター。」

「まずは親御さんのお子さんへ対する意向が大切。でも、サポーター
の私たちと著しく考えが違う場合、どのようにしたらいいか。」

私からは、このような意見を出しました。

ASDのお子さん、そして、その家族の感情的なストレスを緩和するには、 
自分の気持ちにフォーカス、どんな気持ちも受け入れてケアしていくことが
大切。
それには、家族に対する働きかけ、セルフ・ケアのワークショップなどの
開催が効果的ではないか。」

数か月ごとに行われているこの会議。
横の連携が取れ、同じ方向を目指して一緒に歩んで行けたら最高です!


2014年11月27日木曜日

6/24/14 25. 『重度障がい生徒の美術の授業』石川県立いしかわ特別支援学校  


624()の『重度障がい生徒の美術の授業』にアート・セラピーを 
石川県立いしかわ特別支援学校で開催しました。
アート・セラピーをした生徒の皆さんと一緒の写真です

この学校は石川県内で初めての複数の障害種に対応する
特別支援学校として、石川県立総合養護学校として開校しました。

始めに肢体不自由教育部門が、そして、知的障害教育部門が開設し、
成22年4月1日校名が石川県立いしかわ特別支援学校に改名されました。

私がアート・セラピーの帰国ツアーを始めてから、毎年この学校の 
肢体不自由教育部門重度障がいクラスでアート・セラピーを催しています。

重度障がいの生徒が美術のクラスで絵を描くのは難しいとのこと。
痙直、麻痺、不随運動、運動失調などにより筋肉が不随意に動き、
正常に制御できないからです。

私はこのクラスでは学校の美術として他者賞賛を得るための
作品作りではなく、生徒の情感を表すひとつの方法としてアート用具を
用いています。 

私は毎年来校しているので憶えていてくれて、アートの時間を
楽しみにしていた生徒さんもいらっしゃいました。
アート・セラピスト冥利に尽きました。


まず、寒暖の感覚を刺激してみました。

温めた熊のプーさんのゆたんぽをお腹に置いたら、とっても落ち着きました。

クールパックを当ててご機嫌がよくなった生徒さんもいました。
どんな感覚が心地よいかは、人それぞれです。

金属や木製のものを叩いて、いろいろな音を出しました。
気分がハイになって、手で顔をこすっている生徒さん
「色画用紙の中から好きな色を選ぼう」
腕をサポートすると、好きな色に手を伸ばした生徒さん

普段なかなか集中できない生徒さんが熱心に絵の具を塗りつけている
姿に先生もビックリ! 好きな絵の具を指に付けて描きました
 それぞれに個性的な表現が!素晴らしいです!

 先生方にこのクラスの感想を伺うと…

「上原先生が近づいたら、落ち着きをみせたり、興奮して嬉しそうに
していたり。生徒たちがこんな態度を見せるのは、上原先生が自分たちを受け入れてくれると感じるからなのでしょう」

「ゆたんぽやクールパックという肌への温度刺激にあんなに反応するとは驚きました。気分まで左右されるんですね。」

「受け身になりやすい生徒たちなのですが、たくさんの選択肢を与えて、
それを選べるようにサポートすることで自分の意志を伝えようとしていた。このような活動から自発性が育っていきますね。」

毎回、発見や驚きを与えてくれる生徒さんたち。
これからもアート・セラピー来校を続けていきたいです。

2014年11月20日木曜日

6/23/14 24.小児病棟でアート・セラピー&講演『アートで表現!病児と家族やケアワーカーの心のケア』聖マリアンナ医科大学


6月23日(月) 15:00-16:00小児病棟でアート・セラピー
17:00-18:00講演『アートで表現!病児と家族やケアワーカーの心のケア』が 
聖マリアンナ医科大学病院で催されました。
「粘土でこんなの作ったよ~」

聖マリアンナ医科大学病院ではキッズアートプロジェクトと名付けられた
「アートの作成を通じて、入院生活を楽しみ、お友達同士をたたえ合い、 
治療と向き合い、時には家族に元気を与える、アートを描く子どもたちが
主役のプロジェクト(Websiteより転載)」を行っています
 http://kidsartproject.jp/ 

Facebookでは、この日の私の活動をこのように記して下さっていました。

6月23日
https://www.facebook.com/hkidsartproject?hc_location=timeline
 
カナダBC州公認アート・セラピスト/公認心理カウンセラーの
上原英子先生をお招きしての院内ワークショップならびに講演会。

入院中のこどもが少なく少人数での開催となりました。最初は参加を
嫌がっていたこどもも英子先生の力量で最後は笑顔でハイタッチでした。

引き続きの講演会「アートで表現!病児と家族のケアワーカーの心のケア」には約30名が参加。
アートセラピーとは何ぞや?
アートセラピーによって期待でき る効果とは何であるのか?

先生の経験と併せてわかりやすく解説していただきました。参加された
方は皆さんとても熱心で質疑応答を含めると30分もオーバー して終了
でした。

その後の懇親会も楽しかった。
キッズアートプロジェクトを応援して下さっている皆様と直接お話しする
機会が出来て嬉しかった!

上原先生、ボランティアで参加して下さった皆様ご協力ありがとうござい
ました。これからも素晴らしい活動が続けられるように頑張ります。」


小児病棟内にあるお子さんのプレイルーム

長期療養が必要なお子さんの心には、さまざまな気持ちが
渦巻いています。気持ちを素直に表現したくても抑えるてしまって
心の奥底に閉じ込められた気持ちもあるかも知れません。

そんな気持ちをお子さんがお絵かきや工作などで表現しようと
することをご家族がサポートできたら、お子さんはどんなに
心が解き放たれるでしょう。

それには、親御さんを含むご家族がご自身の気持ちとつながることが
第一歩です。

私は小児喘息を患い、5歳の時に心のトラウマとなった入院体験が
あります。虚弱体質だったことでいじめられたり、体育の授業は
見学ばかりで身体機能の発達が良くなかったことが劣等感情に
なりました。

自分は身体が弱くてダメな人間なのだと自分を責め、苦しい気持ちで
幼少期を過ごしました。

でも、身体の状態と人間のとしての価値はイコールではありません。
心理療法を学び自ら心理療法の臨床をするようになって、自分の中で
そのことがはっきりしてきました。

このような体験のある自分が一番対象にしたいのが、病気を持つ
お子さんや、慢性疾患のある方々なのです。

小児病棟にあるプレイルームで入院中のお子さんたちの
グループの時間を設けました。

年齢層は幼児から中学生くらいまでさまざまでしたが、
線を書いたり、形を描いたり、それぞれに楽しみました。

点滴を受けながら、車椅子で、また、無菌のスペースに入って参加したお子さんたちもいらっしゃいました。

お父さんと一緒にお絵かき
みんなそれぞれ違う手の形。手から何が連想されるかな?
筆を使わないで指に直接絵の具を付けて描いてみよう
絵の具が付いた指で歩いていったよ
こんなにカラフルな作品ができました~

色とりどりの粘土で好きなように遊んでみたら… 

作品には私がカナダからお持ちした、ポジティブな言葉のシールを作風に
合わせて貼りました。
それぞれに表情が個性的なピカチュウ
粘土のみどりから連想したら、こんな作品が生まれました~
地面もフィギャーもとってもカラフル
笑顔のお☆さま

紙皿をキャンバスに見立てて粘土でお絵かき気分

参加者の感想は…

「図工の時間の写生は苦手だったけど、自分が好きなように
お絵かきできたのが楽しかった」

「手の形をトレースして、そこから連想するエクササイズは、
いろいろなものが見えて不思議だった」

「絵の具は絵筆でしか使ったことがなかったので、
直接指に絵の具を付けてお絵かきできたのが嬉しかった」

「粘土は間違えがないから好き。
丸めたり、引っ張ったり、伸ばしたり、自由自在」

プレイルームでのアートのひと時がお子さんの瞳を輝かせたことが嬉しかったです。

夕方からの講演『アートで表現!病児と家族やケアワーカーの心のケア』が
開催されました。
檀上の後方に私のアートと詩のコラボの作品を展示させて頂きました

病気になったお子さん本人、また、親御さんやご家族の気持ちに
フォーカスして、グループ・ディスカッション、発表の時間を持ちました。

カナダの私のアート・セラピーの臨床例から、心臓病を持っているA君の事例を
取り上げてスライドをご覧頂きながら解説致しました。
質疑応答の時間には、活発に発言なさった参加者も

 参加者の感想は…

「病気に対して身体的な症状に注目しがちですが、
心の状態も同じように大切にケアする必要があると実感しました」

「病気のお子さんのご家族の心もケアしていく必要があると
気づけたことが収穫でした」

「絵の技術にこだわらないでアートの用具を使って気持ちを表現したり、
気晴らしになったり。
ベッドの上でもいろいろできるんだなと思い当りました」

講演会の後は講演会に参加して下さった皆さんと共に懇親会が催されました。
キッズアートプロジェクトの理事長の渡邊嘉行先生(中央)、理事の麻生健太郎先生(左)副理事長の勝田友博先生(右)と共に


カナダからお持ちした夢が実現するという言い伝えのある
ドリーム・キャッチャーをこのプロジェクトのこれからを祈ってお贈りしました

お子さんたちの、そして、ご家族や医療者の皆さんの夢が叶いますように。
懇親会でご一緒した皆さんと

また同病院をお訪ねしてアート・セラピーの素晴らしさをお伝えできる
機会が持てますように。

2014年11月17日月曜日

6/21/14 23. 『病児の心に寄添うアート体験』財)日本病児保育協会



6月21日(土)14:30~16:00 財)日本病児保育協会第7回保育スキルアップ・オープンセミナー第二部で『病児の心に寄添うアート体験』が日本病児保育協会で開催されました。 

50名の定員を上回るお申込みを頂き、会場は満員御礼。
参加者の熱意を感じ、講師冥利に尽きました。

このワークショップの模様は協会のブログでご紹介頂いていますhttp://sickchild-care.jp/activity/4855/

こちらは2013年の私のアート・セラピーのワークショップの模様を記した協会のブログです
http://sickchild-care.jp/activity/719/


今年の私の講座案内は以下の通りでした。


ワークショップ
「【病児の心に寄り添うアート体験 】アート・セラピーワークショップ2014 」

講師:上原 英子先生
(カナダBC州公認臨床心理カウンセラー/カナダBC州公認

アート・セラピスト)

<このセミナーで学べること> 


●病児保育/保育におけるアート・セラピーの効果を子ども/

保護者・保育者の両面から学ぶことができます。

●「上手だね」「うまく描けたね」と褒めて終わりではなく、

『子どもの気づきを引き出す』ことが大切。そのプロセスを
実際に体験いただけます。

講師は昨年に引き続き、カナダBC州(ブリテッシュ・コロンビア州)

公認臨床心理カウンセラー/公認アート・セラピストである
上原英子先生をお招きします。

昨年とプログラム内容を変更しております。昨年に引き続き

ご参加いただく方にとっても、新しい学びのある場となって
おります。

▼上原英子先生のプロフィール

2008年にカナダのブリティッシュ・コロンビア州のアドラー・スクールで

臨床心理学とアート・セラピー(絵画造形療法)の修士課程を修了。

以後、臨床心理士、公認アート・セラピストとしてカナダ同州の協会に

所属し、心理療法の臨床に携わる。

特別支援教育対象児(慢性疾患児を含む)の問題行動や

発達障害に対する芸術療法の経験豊富。

2010年より毎年帰国時に心理療法の講座を開催。公立・私立の

中高大学、教育機関、医療機関や、一般向けの
『心のアート・ワーク』など、さまざまな対象へのアート・セラピーの
講義と演習の講師を担当している。

協会のブログで講座の内容や進行はご説明頂いているので、
こちらでは会場の写真を中心に掲載しご覧頂きます。

私の前の講座の講師の北浜こどもクリニックの院長、北浜先生にもご参加頂きました。(写真左下)

レースは二人一組になり一方が描く線をもう一方が追いかけるアート・ゲーム。
皆さん無心にペンを動かし、盛り上がりました。

レースで描いた線から何が見つかるか、お互いに探して色で示しています

何が見つかるのか?

そのイメージは相手のどんな生活スタイルから見つかったのか?


今回の講座では、お仕事で保育しているお子さんの病気の

イメージを描いて頂きました。


これは保育をする側の皆さんは、保育するお子さんの病気に
対してどんな気持ちがあるのか、まずご自身に気づいて頂きたかった
からでした。

そして、既に保育者がお子さんの病気に対する自身の気持ちに
に向き合っていることにより、お子さんの病気から生れた不安の投影を
受け入れ易くなり心が落ち着いた状態で仕事に臨めるようになるからでした。

次の作業は各々が作成したお子さんの病気のイメージを貼り合わせ、
グループ画として作成することにより、病児保育スペシャリス
として、皆さんがどのように向き合っていくか表して頂きました。
「どれをどの位置に貼ろうか?」
「いろいろな形に切り抜いて貼るのも面白いよね」
「色や形の調和を考えて貼ると…」

それぞれのグループがお子さんの病気に対する自分たちの
気持ちに気づき、視覚化し、受け入れました。

このプロセスを用いたことにより、腹が据わった状態で保育のお仕事に
打ち込まれますように。

オープン・セミナーの最後に駒崎協会理事長よりお言葉を頂きました。
北浜こどもクリニックの北浜院長先生と駒崎協会理事長との
両手にイケメン写真

参加者の感想は…

「昨年とても楽しい講座だったので、今年二回目の参加です。
お絵かきは技術にばかり目がいきがちですが、アートをお子さんとゲーム感覚で楽しむ方法が体得できてよかったです」

「呼吸法はヨガなど大人がするもののイメージがありました。
深呼吸をする前と後で自分が描いた絵が違うので効果が一目瞭然!
お子さんでもできる呼吸法を習ったので、保育に取り入れていきたいです」

「保育するお子さんの病気に対する心配や不安、怖れなどを
参加者の皆さんでイメージ共にシェアできたのが収穫でした。
私だけじゃなかったと分かり、仕事への意欲が湧いてきました」
参加者の生の声を聴けたらと提案したお茶会が実現しました




講座の後で参加者の講座の振り返りや質問などが寄せられ、
とても貴重な時間を過ごせました。

今後も保育者の皆さん向けのアート・セラピー講座を企画していきたいです。